2010/07/15

Permaculture in Italy

 
 友人夫妻が南イタリアに土地を購入しパーマカルチャーを始めた。ロシアから木材を取り寄せ、ログハウスの建築に取りかかったのは2008年3月のことだ。この夏、はじめてその家を訪ねてみた。モリーゼ州との境にあるアリーフェ(カンパーニャ州)は小さな町だが二千年前のローマの遺壁に囲まれた歴史のある町。彼らの敷地はそこから2キロほど離れた郊外にある。裏手にモリーゼの山々が連なるなだらかな傾斜はパーマカルチャーには理想的だが、友人夫妻にとって、そのすべてが生まれてはじめての経験だった。

 畑には、葡萄をはじめ、オリーブやトマト、ズッキーニ、茄子など、さまざまな作物が栽培されている。日照りなので散水は毎日なのかと思ったら、甘やかすと植物も自力で育たなくなるので水撒は週に一度なのだとか。ログハウスの屋根から雨水を配水管でタンクに移し、傾斜を利用して畑に配水できるようになっている。生活用水は71メートル掘ってようやくみつけた井戸から汲み上げて貯水している。ガスや電気の設備もすべてゼロから整えたのだそうだ。

 住まいには、いまのところログハウスの半地下をあてているそうだが、外気温の変化を感じないので快適に暮らせるとのこと。暖房は薪ストーブ。薪の作り方もじぶんで覚えた。種を植えて野菜や果物を育てることから水や暖の確保まで、毎日が新たな発見の連続で、あれこれ思い悩んでいる暇などないらしい。

 基本的に行っていることは、
①台所用洗剤は一切使用せず、熱めのお湯で布、スポンジなどで洗浄する。油汚れは食事中に使った紙ナプキンで落とす。
②トイレ掃除は、普段は市販のブラシで掃除し、週に一度小さなハンドタオルでトイレの水(大)を流しながら便器に手を突っ込んで素手で洗う。
③家庭菜園
④台所の排水を庭に直接流す
⑤生ゴミを捨てずにコンポストで肥料を作る
⑥コンポストトイレにする  

 
 そのうち、家畜も飼ってじぶんでさばきたいとのこと。いつか、お隣の鳩小屋で鳩を捕まえようとしていた奥さんの横で、ご主人が「最近、鳩が増えちゃってね」とひとこと。どうやら夜の食卓に上がるということらしい。そこで、サバイバルの知識の一環として生きた鳥のさばき方をかねてから知りたいと思っていた友人は、とうとうその日が来た!とお隣に出かけて行った。

その手順はというと、
①サッと鳩の首の羽をナイフでそいで首を切って血を出す。
②熱湯をかけて羽をむしる。これが意外と簡単にスポスポ抜けるらしい。
③そして、解体。

 日常的に口に運んでいる食物がどのようにできるのか、知識として多少知ってはいても、経験的にはまったく知らないのがわたしたち。いくら想像力を働かせても、実際に育ててみなくては解らないことだらけだろう。「こうだ」とひとことで説明できないのが自然や生きものの世界。そんな予測不可能な世界とのおつきあいは大きな冒険だ。なにも遠くに行かなくても、大きなことを考えなくても、足もとに無限の世界がある。ときには張り切りすぎて体調を崩したり、過労で倒れたりもした。壁にもたくさんぶつかってきた。けれども、彼らはコンスタントに明るい。持続可能な環境を作るにはまずじぶんが持続可能でなくてはならないのだろう。そんな彼らが逞しく感じられた。