2010/09/10

La muestra VIS A VIS


  ブエノスのボルヘス文化センター (Centro Cultural Borges) で昨日からガブリエル・ロペス・サンティソ (Gabriel Lopéz Santiso) とわたしの展示会が始まった。2010年を通して開かれているこの"VIS A VIS"は、まったくスタイルの違うふたりの画家の作品を照らし合わせてなにかを感じてもらおうというもの。そのオープニングのレセプションが昨日の夜、開かれた。

 この日のために、これまでせっせと創作活動に専念してきたわけだが、大きな会場で作品を展示するのは今回がはじめて。前日の搬入のときにはじめてガブリエルと顔を合わせ、彼の作品を実際に目にしたのだが、アルゼンチンの素晴らしいアーチストと同じ空間をシェアできることをとても嬉しく思う。

 彼の作品は、わたしのとは対照的で、アクリル絵の具がふんだんに使ってある。カラフルなチューイングガムを細長く伸ばして貼り付けたようでボリューム感があり、それが、細かく網の目のように張り巡らされており、色が何層にも積み重ねられていて、色の下にまた色がある。色には濃淡はなくただひたすら平坦なのだがラインが奥行きを感じさせる。見事なファンタジーの世界だ。

 一方、わたしの作品は、絵の具の量がさっぱりわからない超エコロジックでエコノミック、まるで「空気のような筆使い」と言われている。 ガブリエルの作品の前にいると、エネルギーがこちらに押し寄せてくるのだが、わたしの絵は、そのなかに入っていけるような感じがする。幾重にも色が重なっているのでトーンは暗いけれど、だからといって明るさのないもの悲しい絵というわけではない。墨絵のなかにも光を感じ取ることはできるし、黒のなかにも、いくらも光はある。音楽を聞くとき目を閉じていても光を感じることがあるように。最終的に現れる画布の表面的な色や光には、時間がつまっている。一瞬の一度限りのカリグラフィも、その筆字が生まれるまでには何度も書き直しては捨てられた文字がある。そして、その経過は動きとしてすべて身体のなかに刻まれている。

 昨日の夜、わたしが最初に絵を描いたときに使った古い着物の端切れを持って出かけた。何年か前、絵の教室に通っていた頃のこと、先生に、描きたいものの写真か雑誌の切り抜きを持ってきなさいと言われたのだが、どうしても「描きたいもの」というのが見つからなかった。それで、古い着物の端切れの模様と色を見ながら描いたのが最初の一枚だった。昨日は、ガブリエルにその端切れを見せたかったのだ。なぜなら、彼の作品を最初に見たとき、これは、着物の柄ではないかと思ったからだ。モチーフがとても日本的で、わたしがいつも目にしている帯や着物を思い起こさせた。色も、古い着物の色使いによく似ている。彼の絵をそのまま着物のデザインに使ったらとても斬新的だと思う。

 気がついてみたら、ガブリエルもわたしも、昨日は、まるで申し合わせたかのように、黒のジャケットとパンツ、白のシャツという、まったく同じコーディネートでの出で立ちだった。たぶん、わたしたちはとてもよく似ている。アルゼンチン生まれ、サン・フランシスコで美術を勉強していた彼、そして、フランス、イタリア、アルゼンチンを転々としてきた日本生まれのわたし。思考回路も感じ方もまったく違うのだろうけれど、どこかが似ている。

La muestra VIS A VIS
desde el 9/9 al 3/10/2010
http://www.ccborges.org.ar/exposiciones/expovisavis%205.htm